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感想:市川沙央『ハンチバック』(文藝春秋)

先ほど第169回芥川賞受賞が発表された、市川沙央さんのデビュー作。
第128回文學界新人賞受賞作として文學界5月号に掲載されました。すでに単行本も発売中。
雑誌で読んだ時から「これはヤバい」と衝撃を受けた者として、明日以降さらに多くの人に読まれ話題にされると思うと、勝手にドキドキしてしまいます。
<自身をモデルにした難病40代女性が主人公>という説明で手にした人は、冒頭から面食らうでしょう。
世間が押し付けてくる偏見・思い込みをことごとく打ち壊し、嘘くさい共感も同情も感動も拒否し、圧倒的な語彙力・文章力で駆け抜ける。
「目を逸らさず、耳を塞がず、受け止めろ」と訴えるような、言葉の力強さ。切実さ。覚悟。
そして小説への信頼、愛情。
私自身の無知や傲慢を恥じると同時に、小説が持つ可能性を久々に体感できました。
決して無視できない、社会を変える力を持つ作品。
出版社の書籍情報ページ、著者コメントや推薦コメントが面白いので、気になった方は読んでみてください。
文學界8月号、荒井裕樹さんとの往復書簡も非常に読み応えがあります。
同じく芥川賞候補となった児玉雨子さん『##NAME##』
異なる設定ながら「非当事者の暴力性」「当事者の声を聞くことの重要性」を切実に言葉にした、という点で共通していると思いました。
こちらも読んで打ちのめされる、凄い作品。
※先日視聴した、石原真衣・横道誠オンライン対話企画「当事者研究からオートエスノグラフィーへ/オートエスノグラフィーから当事者研究へ」が、当事者性について非常に丁寧に語られていて勉強になりました。今後何かの形で発表されたらいいなと思います。